【特集】制定20周年を迎える土壌汚染対策法④~識者メッセージ

環境省と自治体が公表する要措置区域等の情報について

西田道夫 (元・協同組合地盤環境技術研究センター理事)


 私は平成23年7月から、環境省のホームページに掲載されている、「要措置区域等の一覧」に興味を持ちました。毎月の全国の要措置区域等の指定・解除から土壌汚染対策法の施行状況を知ることができると考えました。当時の全国の要措置区域等は411ヶ所(要措置:41ヶ所、形質変更:370ヶ所)でした。令和4年2月では、3,381ヶ所(254、3,127)となっており、8.2倍(6.2、8.5)と膨らんでいます。土壌汚染に対する社会的な認識が増加したことは確かです。


 毎月、環境省の「要措置区域等一覧」を見ていると、初めのころは数か月間、次第に数年間、更新がない自治体(都道府県・政令市)に気が付きました。そこで、更新のない自治体をそれぞれのホームページで確認すると、指定・解除に従って随時更新されている自治体が、多数ありました。兵庫県の例ですが、令和3年2月では最終指定年月日が平成27年3月24日でしたが、翌月3月では令和3年3月19日であり、区域の指定箇所は43ヶ所から94ヶ所と倍以上に増加しています。環境省は平成27年3月から令和3年3月までの6年間、更新はしていませんでした。私は、記憶によれば令和2年の7月に兵庫県の担当の方に、「環境省では更新されていませんが、どうしてですか。」と、問い合わせたところ、「兵庫県としては、環境省への報告は適切に行っていますので、環境省にお尋ねください。」という予想通りの回答でした。8月頃に環境省へ問い合わせると、驚いたことに、電話で対応くださった方が、「要措置区域等一覧を見て下さってありがとうございます。」と挨拶されました。兵庫県の件については、「環境省としては、兵庫県から提出された資料に基づいて、ホームページに掲載していますので、それ以上は分かりません。」という想定内の回答でした。つまり、環境省としては自治体の事例を確認していないということが考えられます。そんな会話をしてから半年後の令和3年3月に、3月までの要措置区域等が更新されました。


 ここからは、令和4年2月28日の要措置区域等一覧について、環境省と各自治体(都道府県と政令市)の最終指定年日について触れます。自治体の最終指定年月日が環境法の最終指定年月日を超えているケース、つまり、環境省が適切な更新を怠っていると考えられるケースは、『北海道・東北地方』では青森市・仙台市の2政令市、『関東地方』は宇都宮市・太田市・東京都・八王子市・横浜市・相模原市・横須賀市の1都6政令市、『中部地方』は新潟市・山梨県・浜松市・沼津市・名古屋市の1県4政令市、『近畿地方』は滋賀県・八尾市・兵庫県は2県1政令市、『中国・四国地方』は岡山市・徳島県・香川県は2県1政令市、『九州地方』は北九州市、佐世保市、宮崎市、沖縄県の1県3政令市で、全国では23自治体(都道府県:6、政令市:17)あります。環境省と自治体の最終年月日の間隔が長期にわたるのは、栃木県宇都宮市・静岡県沼津市の3年5ヶ月、東京都八王子市の2年10ヶ月、神奈川県相模原市の2年7ヶ月、宮崎県宮崎市の2年6ヶ月が、令和元年以降に更新がありません。その間に指定された区域は、宇都宮市:4ヶ所(要・形:各2ヶ所)、沼津市:1ヶ所(形)、八王子市:2ヶ所(形)、相模原市は全て解除で:5ヶ所(要:1、形:4)、宮崎市:解除・1ヶ所(形)。これらの区域は、環境省のホームページでは指定された時期に確認することはできません。


 この他に6ヶ月以上の間隔がある自治体では、群馬県太田市が1年7ヶ月で、環境省は形質変更:3ヶ所であるが、市では形質変更:2ヶ所で、環境省区域指定の2ヶ所は解除され、新たな指定が1ヶ所である。東京都は1年間で要措置:3ヶ所、形質変更:71ヶ所が指定されている。ただし、この1年間で指定された71ヶ所のうち12ヶ所は、この1年の間に解除されており、東京都のホームページにおいても具体的な事例は確認できない(東京都のWeb上では、「土壌汚染情報の公開ページ」において、台帳を閲覧することはできる)。山梨県は1年8ヶ月で1ヶ所(形)、大阪府八尾市は10ヶ月で1ヶ所(形)、兵庫県は6ヶ月で解除3ヶ所(形)、指定5ヶ所(形)、長崎県佐世保市は1年11ヶ月で指定4ヶ所(形)、沖縄県は1年7ヶ月で解除1ヶ所(形)、指定3ヶ所(形)でした。


 このような環境省の「要措置区域等一覧」を見て、環境省は「要措置区域等一覧」について、積極的に情報を収集して、責任をもって情報を発信している、という点に疑問を感じています。東京都は平成30年度からは毎月の更新の公表はなく、年度ごとに纏めて公表するようになりました。その点を環境省に伺うと、「毎月の情報が多く、その情報の正確性を確認するために長時間がかかり、毎月では対応しきれず、年間でまとめることにしました。」という返事、でも、1年に纏めれば忙しい期間は短縮できるかもしれませんが、その期間に毎月の12倍の情報を扱うことになり、返って忙しくなると思いますが。私としては、1~2か月遅れても、各自治体の情報を定期的に更新した方が、環境省の「要措置区域等一覧」への信憑性が高くなり、広く受け入れられると思います。適正な情報を提供することは、行政にとって重要な責務ではないでしょうか。

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