2011年3月の東日本大震災の発生に伴う原発事故を機に日本国内でも再生可能エネルギー普及拡大が叫ばれ、太陽光発電だけでなく、エネルギー消費量の抑制すなわち省エネに通じる地中熱など再生可能エネルギー熱利用にも注目が集まりました。
経済産業省や環境省の補助金も重点化され、普及を後押しする体制が整っていき、地中熱利用の件数も急激に増えていきました。
しかし、最近、再生可能エネルギー熱利用の補助金の見通しが暗くなってきています。
補助事業を継続してきた経済産業省、環境省ともに2020年までは再エネ熱利用の補助金を継続する予定としていますが、その後は不透明な状況です。
熱利用だけでなく様々な要素を組み合わせて達成するネット・ゼロエネルギー・ビル(ZEB)やネット・ゼロエネルギー住宅(ZEH)といった政策、補助事業の中で再エネ熱利用も選択肢の一つとして組み込まれていく流れは現在もありますが、再エネ熱利用については現段階ではまだ地中熱ヒートポンプ等の製品や熱交換用の井戸工事などイニシャルコストの高さが課題とされており、その課題も克服できていない状況下で再エネ熱利用にターゲットを絞った補助金が打ち切られれば「選択肢として選ばれるのか?」と危機感を募らせている再エネ事業者も少なくありません。
最近では空気熱源の冷暖房システム(外に室外機を置き、空気で熱交換して室内の冷暖房を行う、いわゆるエアコン)も飛躍的に性能を上げており、省エネ等の観点だけで見ればそれでいいのかもしれません。
しかし、空気熱源方式は大気で熱交換することに変わりはなく、夏季には部屋を冷やすために排熱を大気中に放出します。地表がアスファルト舗装などで覆われている都市部では温暖化だけでなく、ヒートアイランド現象の影響により夏季の気温上昇が厳しいのが実情であり、こうした状況も踏まえると排熱を大気ではなく地中で行う地中熱源方式は都市部のヒートアイランド現象緩和対策の一助にもなれるものであり、もっと広まってもいいのではないかと思う次第です。
イニシャルコストなど普及拡大への課題が残るとされる中、ZEBやZEHなど総合的な省エネ対策の中で再エネ熱利用が生き残れるのか、再エネ熱利用を取材し続けている私個人もいささか不安を感じます。
地中熱の省エネ効果の高さは業界の取り組みでだいぶ知られるところになりましたが、今後は省エネだけでなくヒートアイランド現象の緩和効果などその他インセンティブも全面に押し出していく必要があるように思います。
そのためにもまだ当面は、再エネ熱利用に焦点を絞った補助事業が必要ではないかと考えています。
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