特集:土壌汚染に悩む中小事業者へ②~指定調査機関に聞く:トランスバリュー・リアルエステートサービス㈱

指定調査機関トランスバリュー・リアルエステートサービス㈱(指定番号2014-3-1010)

代表取締役 安田晃さんに聞く

対象地域:全国


 土壌汚染の調査・対策に向き合う時、その相談先となるのは、土壌汚染対策法に基づく指定調査機関です。今回は、土壌汚染調査・対策の“入り口”である「資料等調査」をメインに、中小事業場や工場等、土地所有者の相談を受けているトランスバリュー・リアルエステートサービス㈱(東京都中央区日本橋本町2-6-13)代表取締役の安田晃さんに、その経験を踏まえ、中小事業場・工場、土地所有者が土壌汚染と向き合う時の課題や解決策をどのように考えているのか聞きました。

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◆これまでで印象的だったケース◆


 聞き手:御社は土壌汚染対策で最初に行われる土地の履歴調査等に特化したサービスを行っていますが、これまでに経験した中小事業者の土壌汚染調査・対策で印象的だった事例はどのようなケースがありますか?

 安田氏:借地の返却時に、トラブルになりかけ、地歴調査が効果を発揮した事例です。工場を借地で操業していた事業者様が事業縮小に伴い借地部分を地主へ返却するに際し、地主から土壌調査を求められましたが、土壌汚染対策法全物質の分析をするべきであるかのような要請内容でした。

 また、試料採取前に、地歴調査を行い、当該事業者以前にも業種が異なる事業者が土地利用していたことが分かり、調査項目の削減ができた他、土壌汚染が見つかった場合でも、自分達による土壌汚染ではない可能性がある(と推認できる)と主張できるとしたケースがありました。

 地歴調査に限らない事例ですが、法や条例に関する意識があり、自主的に調査・対策を進めていたため、工場の廃止時に発生した法に基づく土壌汚染状況調査時には土壌汚染がなく、円滑に廃止手続きならびに売買契約が進んだという事例が印象的です。

 工場廃止後に調査義務が発生してからだと間に合わない(売却したくてもすぐに売却できない)という事例が出てきており、自主的な調査・対策が先々も有効である(一度、土壌汚染対策をすることで、その後、新たな土壌汚染を発生させないよう、環境面で配慮する)ことを再認識しました。


◆法や条例の認識不足◆


 聞き手:これまでの経験を踏まえ、中小事業者の土壌汚染対策で事業者自身、制度などそれぞれで課題と感じる点はどのようなことですか。

 安田氏:法や条例の周知がなされていない(認識不足)点です。中小事業者の方は、土壌汚染に対して、どうしても難しく感じ、後回しにしてしまいがちです。

 特に地歴調査では、「土壌汚染が存在するおそれが少ないと認められる土地」と「土壌汚染が存在するおそれがないと認められる土地」の区分に関しての認識の相違が強いという印象です。そこは指定調査機関がしっかりと説明をしなければいけない、のかもしれませんが。。

 聞き手:課題をクリアするために必要だと思うことは何ですか?

 安田氏:気軽に相談できる場所(行政や第三者機関)の相談窓口が必要です。東京都など一部の行政にも一般相談窓口が開設されるなど、動きは見られますが、全国レベルではまだまだこれからです。

 また、第三者機関についても、例えば、中小企業にとっては高額となる1000万円を超す土壌汚染対策工事の見積もりに関して、第三者によるチェックを受けることが難しい状況もあるため、その妥当性を検証できる仕組みも必要であると思います。一般的には、相見積もりを取得しているケースが多いようですが、見積り様式が異なり、単純に比較ができない(比較しにくい)という話を聞いたことがあります。


◆地歴調査経験豊富なスタッフの調査で、法的には調査を求められていない土地の範囲での試料採取を回避しつつ、調査密度や調査分析項目を絞り込み可能◆


 聞き手:御社の強みである地歴調査が、資金的な課題等を抱える中小事業者の土壌汚染問題にもたらす可能性があるメリットはどのようなことがありますか。

 安田氏:年間800件を超す実績があり、地歴調査に対しては経験を積んでいるため、多種多様な事業者様の対応が可能です。また、地歴調査の経験が豊富なスタッフが調査を行うことで、法的には調査を求められていない土地の範囲での試料採取を回避しつつ、調査密度や調査分析項目を絞り込むことができます。ただ、そのためにはしっかりとした根拠や資料が必要となりますが、公的届出資料を紛失している時に情報公開請求を行うことが必要となるなど、一定の時間を要する点には留意が必要です」

 聞き手:御社の対象エリア及びは。

安田氏:全国です。実績としては全国(北海道~沖縄)ありますが、件数としては、1都3県(東京都・神奈川県・埼玉県・千葉県)が多いです。


◆事業廃止後ではなく操業中から土壌汚染調査の実施検討することが望ましい◆


 聞き手:事業を行っている場所で土壌汚染の可能性があって悩んでいる中小事業者等へのアドバイスを。

 安田氏:事業廃止後に、調査や対策のことを考えていくのではなく、操業中であっても土壌汚染に係る調査の実施検討をすることも視野に組立てていくことが望まれます。

 また、地歴調査に必要となる過去の行政への届出書類や有害物質に係る資料の保管は是非、大切に保管しておいていただきたいと思います。(終わり)


※トランスバリュー・リアルエステートサービス㈱のホームページは以下アドレスを参照ください。

http://www.tvres.co.jp/



「GeoValue」~環境と安全・安心から土地の価値を~ECO SEED

ECO SEEDは、環境専門紙における10数年の記者経験を生かし、環境ビジネスのさらなる発展とその結果生まれる安全・安心な社会に繋げるための情報発信、環境系団体や環境ビジネス事業者の広報、啓発活動などをサポートしています。(代表・名古屋悟) 【主な取り組み】 ・オリジナル電子媒体「GeoValue」の配信(有料) ・広報コンサルティング など。

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