◆◆中小事業者の土壌汚染対策をサポートする東京都◆◆
◆東京都環境局環境改善部化学物質対策課土壌地下水汚染対策担当に聞く◆
土壌汚染対策等の情報発信を行っているECO SEED(代表・名古屋悟)では、WEB特集企画「土壌汚染に悩む中小事業者へ」を掲載し、土壌汚染対応に苦慮している中小事業者の皆様の参考にしていただきたいと思っています。その第一弾は、東京都内の土壌汚染対策法窓口である東京都環境局環境改善部化学物質対策課土壌地下水汚染対策担当の担当者に、行政として土壌汚染問題に向き合う中小事業者にどのように対応しているのか話を聞きました。数多くの中小事業者がある東京都では、独自に「中小事業者のための土壌汚染対策ガイドライン」を策定するなどしており、その取り組みは大きな参考になります。(聞き手:エコビジネスライター・名古屋悟)
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
◆土対法届出状況見ると半数弱が零細事業者の東京都◆
聞き手:土壌汚染対策法に基づく区域指定等の件数が国内でも多い東京都は有害物質使用特定施設を保有する中小事業者の数も大変多いと思いますが、全体に占める割合はどのくらいになりますか?また、中小事業者から相談を受けることも多いと思いますが、どのような相談が多いですか?
東京都担当者:都産業労働局の資料によれば、都内の製造業の事業所数は約2万7,000所で、「1~3人」の事業所数が約5割となっています。特定施設の廃止に伴う土壌汚染対策法の届出状況を見ても、敷地面積300㎡以下の零細事業場の数は半数弱に達します。
中小事業者からの相談内容としては、「事業場を廃止したいがどうしたら良いか」、「土地を売りたいが手続きは必要となるか」、「土壌汚染が確認されたが除去しなければならないのか」などがあります。
◆法令では必ずしも土壌汚染除去を求めないが、工事予定等が迫っている場合対策の選択肢が限られてしまうことも…早期の対応がポイントに◆
聞き手:土壌汚染対策法や都環境確保条例など土壌汚染に関する制度がありますが、中小事業者が土壌汚染に向き合う際に制度上で特に留意すべきポイントがあれば教えてください。
東京都担当者:法令では、事業場の廃止時等に調査・対策の義務が生じますが、その目的は汚染の拡散防止であり、必ずしも土壌汚染の除去を求めるものではありません。しかし、工事予定や土地の売却が迫っているなど、時間的に余裕がないと、対策の選択肢が限られてしまうことも多く、早期からの対応がポイントとなります。操業中から土壌汚染の調査・対策に取り組むことができれば、合理的な対策も選択しやすくなります。
また、法令の知識不足から、本来、除去しなくても良い土壌汚染まで掘削除去しているなど、過大な対策を選択している事例も多く見られるので、法令を正しく理解した上で、関係者間で調整を行うことが留意すべきポイントになると思います。
◆低コスト・低環境負荷で健康リスクを確実に回避する対策(合理的な対策)を選択するための具体的な手順等を示す「中小事業者のための土壌汚染対策ガイドライン」◆
聞き手:都では独自に「中小事業者のための土壌汚染対策ガイドライン」を作成されています。ガイドラインを作成している目的は?また、昨年末には改訂版を公開しましたが、改訂の理由及びポイントを教えていただけますか。
東京都担当者:上記のような中小事業者の方々から相談が多い点、対応のポイントなる点について、分かりやすく伝えるために、作成しています。具体的には、土壌中の有害物質による健康リスクや、土壌調査に関する基本的な知識、低コスト・低環境負荷で健康リスクを確実に回避する対策(合理的な対策)を選択するための具体的な手順等について、分かりやすく解説しています。
都が昨年末に公開した改訂版は、2019年度の法令改正の内容をご理解いただくために、解説図やフロー図などを修正・追記しているほか、土地利用をしながら進められる対策、操業中からの対策などを充実するとともに、コラムや巻末資料を追加しました。
具体的な改定内容は、土壌汚染対策の方法として、「立入禁止」、「地下水のモニタリング」、「地下水揚水による汚染の拡大防止」の事業者が実施しやすい3点を追加。また、対策のケーススタディとして、「跡地利用に合わせた掘削場所の工夫により土壌の搬出量を減らした事例」、「土地を利用しながら地下水の対策を実施した事例」、「操業中から計画的に浄化対策や地下水測定を実施した事例」など4点のより合理的な事例を追加しています。
◆関係者間で良く話し合いをして、場合によっては専門家に間に入ってもらうことで、共通認識を持ち、誤解を解いていくことが必要◆
聞き手:「基準超過が判明したら完全浄化をしなければならないのでは?」とか、「土対法の区域指定などを受けた土地は指定を解除されない限り土地の開発や売買ができないのでは?」という認識が今も少なくないようです。こうした中、ガイドラインでは、汚染を管理する対策で土地利用しているケースなどを紹介していますが、この辺りを事業者や土地所有者はどのように考えればよいですか?
東京都担当者:法令では、必ずしも、土壌汚染を除去することは求めていませんが、基準に適合しない土壌を全て掘削除去するといった過剰な対策事例が未だに多い現状です。(土壌汚染対策において全量掘削除去を実施した割合:平成19年70%⇒平成25~28年度約50%)
法令で求められる対策は、健康被害を防止するために、汚染土壌を人に触れないようにするなど、経路を遮断する対策や、モニタリングを継続する対策であり、区域指定を受けながら、土壌の飛散や周辺の地下水の悪化が生じないように、適切に管理していくことが必要です。関係者間で良く話し合いをして、場合によっては専門家に間に入ってもらうことで、共通認識を持ち、誤解を解いていくことが必要と考えます。
「法令では対策を求められていないが、例えば、土地売買の民‐民の契約では対策が必要になる」という意見も良く聞きますが、それも話し合いと契約の仕方次第であると考えます。その際、土地の利活用方法に応じて、土地を売る側と買う側のマッチングが上手くいくかどうかもポイントになるようです。
◆土地売買するからと言って必須ではない掘削除去◆
聞き手:措置には、掘削・除去、原位置浄化、不溶化、地下水質測定など様々な浄化措置、管理措置があり、中小ガイドラインでも紹介されていますが、それぞれどのようなケース(土地売買など)に向いていますか?
東京都担当者:様々なケースがあり、一概には言えませんが、それぞれ汚染状況や、周辺に飲用井戸があるかどうかといった諸条件で、対策は変わってきます。細かい適用条件は、『中小事業者のための土壌汚染対策ガイドライン』に分かり易く示していますので、活用いただけると幸いです。
土壌汚染対策法に基づき区域指定されている土地においても、区域指定を受けたまま適切に管理し、土地の売り買いや、様々な用途で土地を利活用している事例も多い状況であり、土地の売買等をするからと言って、掘削除去は必須ではありません。今後の土地利用に応じて、対策を工夫できる点は多いと思うので、複数の対策について、現場の状況に応じて比較検討して、関係者で情報等を共有しながら決定するプロセスが重要であると、ガイドラインでも示しています。
また、原位置浄化など、安価ではあるけれども時間が掛かる対策を効率的に進めて行くためには、操業中から対応を行っていくことが重要であり、今回のガイドラインでも、この点を強調しています。
◆土壌汚染相談窓口、土壌汚染対策アドバイザー派遣制度などでサポート◆
聞き手:法や条例に基づく手続き等に不慣れな事業者がほとんどだと思いますが、その辺りのサポートはどのようになっていますか?
東京都担当者:都では、技術面からのサポートとして、「土壌汚染総合相談窓口」と「土壌汚染対策アドバイザー派遣制度」を用意しています。
このサポートにより合理的な対策を進めていただくことで、結果的に、経済的な助けにもなれればということで取り組んでいます。さらに、操業中からの対策の重要性は先程述べましたが、この操業中対策を推進するために、アドバイザーが操業中の事業場において土壌等の調査を実施する支援策もあります。
なお、アドバイザーの派遣や調査の実施は無料でご利用いただけます。
◆心配を取り除くためにも早め早めの相談が第一歩◆
聞き手:最後に、土壌汚染に向き合う中小事業者の方々に伝えたいことがありましたら教えてください。
東京都担当者:土壌汚染を過度に心配するが故に、対応が遅れ、大きな負担となってしまう事例を耳にしますが、合理的に対応していくためには早め早めにご相談いただくことが、心配を取り除くためにも、まず、第一歩であると思っています。
都としても可能な限りの技術支援を用意していますので、まずは、お気軽にご相談ください。(問い合わせ先は下記に記載)
聞き手:貴重なお話、ありがとうございました。事業廃止や土地の売買の話が出てギリギリになってから対応するのではなく、早い段階から備えておくことで対応する際の選択肢に余裕が生まれるという点は、人の健康維持のための健康診断と同じような感じだと思いました。また、東京都が行っている「土壌汚染対策アドバイザー派遣制度」はほかの自治体の参考にもなりそうですね。今回のインタビュー、土壌汚染に悩む中小事業者の皆様にぜひ読んでいただきたいと思っています。(終わり)
【相談先】
土壌汚染総合相談窓口(東京都環境局):03-5388-3468
(現在は、コロナウィルス感染防止対策もあり、原則として電話で相談を受け付けています。)
東京都ホームページの土壌汚染対策に関するアドレスは以下の通りです。
https://www.kankyo.metro.tokyo.lg.jp/chemical/soil/index.html
---------------------------------------------------------------------
【広告】※広告クリックで各社ホームページへ!
0コメント